2010年4月13日火曜日

春夜 雨をよろこぶ

昨日は1日中雨天でした。
境内を華やかに彩っていた桜の花もすっかり散りました。 花が散りだすと同時に若葉が芽吹いてきています。
本堂前のもみじも若葉が芽吹き、爽やかな緑色をしてきました。

今から1250年ほど前の中国でこんな漢詩の一部が創られています。
タイトルは「春夜喜雨」で、「春夜[しゅんや]雨を喜ぶ」と読みます

好雨知時節 (好雨[こうう]時節を知り)
當春乃發生 (春に当って乃[すなわち]ち発生す)
随風潜入夜 (風に随って潜[ひそか]に夜に入り)
潤物細無聲 (物を潤して細やかにして声無し)
~以下略~
≪和訳≫
よい雨は、その降るべき時節を知っている
春になると降りだして、万物の生命が萌え始める
雨は風にしたがってひそかに夜中まで降り続き
万物を細やかに音も立てずに潤している
~以下省略~
まさしく昨日の雨が、この詩で描かれている雨ではないでしょうか。
1000年以上の時を隔てても、目の前の情景は変わらないというのは実に不思議ですね。
時代が大きく変わろうとも、自然の普遍性は偉大なもであることをとつくづく感じます。
これは「杜甫(とほ)」という方の作です。
同じ世代の「李白(りはく)」が「詩仙」と称されたことに対し、
「詩聖」と称された最高の漢詩人ともいわれています。



杜甫(とほ)が生きた時代は、唐の玄宗(げんそう)皇帝から粛宗(しゅくそう)皇帝にかけての時代で
西暦でいうと700年初めから終わりにかけてに当ります。
日本では奈良時代、ちょうど奈良の平城京に都が置かれていた頃です。
真言八祖の第6祖にあたる「不空(ふくう)三蔵(さんぞう)」もこの世代の方です。
弘法大師が日本へ持ち帰った「理趣経」をはじめとする密教経典は、
この「不空三蔵」が訳したものが多く含まれています。
不空三蔵はこの時代、多くの密教経典を当時の唐の皇帝の勅命により漢訳しました。
ところで・・・
この時代、不空三蔵は、杜甫や李白のことをご存知だったのでしょうか・・・
また杜甫や李白は、逆に不空のことをご存知だったのでしょうか・・・
ちょっと想像してみたくなってしまいます。